Interview
Interview

安藤 政信

安藤 政信 俳優

Amazon Fashion Week TOKYO 2017 A/W Backstage Photographer

1975年5月19日、神奈川県生まれ。1996年に北野武監督の映画『キッズ・リターン』で主演デビュー。その後も映画を中心に俳優として活躍し、中国や台湾映画にも多数出演。

1996年に北野武監督作品『キッズ・リターン』でデビューして以来、日本映画界を代表する俳優の一人として、数々の作品に出演してきた安藤政信氏が、Amazon Fashion Week TOKYO 2017A/W会期中にフォトグラファーとしてショーのバックステージに潜入し、撮影を行った。20代から俳優活動の傍らで写真作品の制作に取り組んでいた同氏の希望と、ショーのバックステージをこれまでにない視点で皆さんに発信したいという我々JFWOの思いが重なり、実現した本企画。会期を終え、写真に対する思いや、今回の撮影のエピソードなどをご本人に伺った。

 

Masanobu Ando

 

ファッションショーのバックステージを撮るのは初めての経験だったと思いますが、数ブランドのバックステージ撮影を終えた率直な感想からお聞かせ下さい。

ファッションショーを見ること自体も今回が初めてでしたが、洋服というものをベースにさまざまなスタッフたちの感情が交差し、その結晶がショーという形になって観客に届けられるという一連の流れは映画づくりにも似ているところがあり、とても共感できました。今回バックステージに入らせていただき、発表される洋服はもちろんですが、舞台裏のさまざまな感情のやり取りも見ることができ、本当に美しいなと感じながら、シャッターを押していました。

 

今回の撮影には、どのような意識で臨みましたか?

バックステージで、見方によって人間とも人形ともとれるようなモデルたちに洋服がどんどん重ねられていく様子が自分にはとても興味深く、子どもの頃に見たSF映画のワンシーンのようなイメージが浮かびました。そこで今回は、自分が過去に見た映画や映像のワンシーンに重ね合わせながら、一瞬一瞬を切り取っていきたいという思いで撮影に臨みました。また、僕は役者の仕事を通して、自分の感情を表現するということを強く意識しているので、今回の撮影に関しても、洋服やヘアメイクなどにフォーカスするよりも、被写体の感情をしっかり撮りたいと考えていました。自分が使っているカメラは50mmの単焦点レンズということもあり、なるべく対象に近づき、被写体の感情を撮るということを心がけました。

特に印象に残っている撮影中のエピソードがあれば聞かせてください。

最初の撮影になったHAREでは、まだ何もないガランとした状態の会場に午前中から入り、建て込みやリハーサルなどの様子をずっと見ていました。その時に、ショーの本番はどのくらいの時間なのかと聞いてみたら、10分程度と言われて、あまりの短さにとても驚きました。本番が近づくにつれて高まっていくデザイナーたちのドキドキ感がよく伝わってきたし、撮影を終えて、とても良い一日だったなと感じました。2日目以降の撮影もすべて思い出深いのですが、知り合いのスタイリストやヘアメイクが担当しているショーもあって、普段友達として接している彼らが、現場では真剣に鋭い表情で仕事をしていて、その姿を見ることができたことも印象的です。やはりショーの直前は想像以上に空気がピリピリしていて、「今は(撮影は)やめてくれ」と叩き出されることも何度かありました(笑)。怒られるのは当たり前のことですが、せっかくこんな状況を与えていただけたのだから、あえて空気を読まず、この瞬間にしか撮れないものを残さないといけないという使命感のようなものは常にありました。

 

モデルの仕事には、俳優と共通する部分もあるかと思いますが、バックステージの様子を見て何か感じることはありましたか?

洋服を着てランウェイを歩くという単純な仕事のように見えますが、やはりそこには専門的な技術が必要だし、洋服が最も美しく見える瞬間を表現するモデルたちの凄さを目の当たりにして、本当にかっこ良いなと感じました。モデルたちも本番前はみんなドキドキしているのが伝わってきたし、ランウェイを歩き終えてバックステージに戻ってくる瞬間も待ち構えて撮影しましたが、始まる前の緊張感と、終えた後の安堵感のようなものは役者の仕事をしている僕もとても共感できるし、モデルやデザイナーがショーを終えて「ふぅ」と息をついて戻ってくる時の達成感あふれる表情は、見ていて鳥肌が立ちました。

 

ところで、安藤さんはいつ頃から写真を撮るようになったのですか?

役者になる前までの自分には、写真というと遠足の記念写真くらいしかイメージがありませんでした(笑)。でも、今の仕事を始めてからは写真を撮っていただく機会が増え、カメラの前で演じる自分が、ひとつの世界観の中で切り取られた写真を見せてもらった時に、とても感動したんです。それがきっかけで自分でも写真を撮ってみたいと思うようになりました。ちょうどその頃に知人のカメラマンに連れて行ってもらったシンディー・シャーマンの写真展でセルフポートレートのシリーズを見て、映画のワンシーンを切り取ったような作品だと感じたんです。それ以来、セルフポートレートを撮るようになったり、役者仲間にモデルになってもらい、ストーリーや世界観をつくった上で撮影をするということをプライベートで始めるようになりました。

 

どんな写真を撮影されることが多いのですか?

実は、被写体を血糊などで血だらけにして撮影することが多いんです(笑)。もともと生命力や死に対する恐怖などに興味があり、これらを象徴する鮮烈な赤を表現したいと思っていました。これまでに役者仲間や先輩を血だらけにしたフォトストーリーなどを撮影してきました。あくまでもプライベートな撮影です。また、先程もお話ししたように、人間の感情を撮りたいという思いがあるので、あえて被写体を過酷な環境に置いて撮影することもあります。これは、自分が役者としてそういう状況で演技をする機会が多いということも関係しているのだと思います。

 

 

写真の技術は独学で習得されたのですか?

はい、基本的にはそうです。ただ、これまで自分が撮影されることも多く、色々なカメラマンに撮ってもらっているので、ライティングに関してはもともとイメージはできていました。とはいえ、そうしたライティングを真似たりすることはなく、あくまでも被写体の感情を撮るということを徹底するように意識しているし、それによって自分の写真というものがひとつの形になっていくのではないかと思っています。

 

Masanobu Ando

Masanobu Ando Camera

映像を撮ってみたいという思いはないのですか?

それこそ自分で映画を撮ってみたいと思っていた時期はありました。役者として経験を重ね、海外の映画祭に行ったり、色々な監督とお会いしたりするようになるにつれて、2時間の映画を撮影することの大変さや凄さがよくわかるようになりました。それを今すぐやるのは難しいですし、それよりも自分が好きだと感じる一瞬一瞬を切り取る方が自分の表現方法としては合っていると思っています。だから映像も瞬間を静止画のように楽しむと言うか、例えば、20代の頃から各地の花火大会を撮影していて、それを好きな音楽をかけながらスロー再生で見たり、屋久島に行って水の流れだけをずっと撮影したりということはしています。

 

写真にしても映像にしても、瞬間を切り取りたいという欲求が強いのですね。

そうですね。まだ僕が幼稚園に行っていた頃、家族4人で寝ている時にふと目が覚めたら、台所の扉の曇りガラス越しに色んな光が動いたり伸びたりしている様子が見えたんです。もちろん、子どもの頃だからお酒を飲んで酔っ払っていたわけでもなく(笑)、その時に確かに見た不思議なイメージがずっと自分の中に残っているんです。だから、今でもキラキラした光に無性に惹かれるところがあるし、シャッタースピードを遅くして闇夜で光を撮影することが好きなのも、その時の体験があるからなのではないかと思っています。

 

今後、安藤さんが新たに撮影してみたい対象などがあれば教えてください。

ファッションショーのバックステージ撮影は、また機会があればぜひやりたいです。僕の中には新しい対象を撮ることよりも、同じものを飽きずに撮り続けていきたいという思いが強くあります。だから、これまでプライベートで撮影してきた俳優仲間たちの写真はこれからも撮り続けていきたいですね。僕は、同じルーティーンをピュアに楽しみ続けられることが最も良いことだと思っています。ファッションショーにしても、ブランドごとにデザインや世界観は違いますが、基本的には同じルーティーンを続けているわけですよね。そういうものに対して飽きずに感動し続けられるということが、とても素敵なことだと思います。

Masanobu Ando

 

Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto

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