Interview
Interview

濱田 大輔 Daisuke Hamada

濱田 大輔 Daisuke Hamada niuhans(ニュアンス)

Istituto Marangoni Scholarship – Supported by THE FASHION POST, Tokyo vol.3

「niuhans(ニュアンス)」は2010年、濱田大輔が立ち上げた東京を拠点とするブランド。
厳選された天然素材のみを使用し、日本独自の伝統的な服づくりの技術にこだわって、シンプルでクリーンな日常着を提案している。すべてが日本製で、職人技が生きた高品質で安心感と信頼感のある服づくりをしている。

将来の活躍が期待されるデザイナーを「THE FASHION POST」と一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)が推薦し、イタリアのファッションとデザインの専門学校「マランゴーニ学院」の留学プログラムへの参加をサポートする「Istituto Marangoni Scholarship Supported by THE FASHION POST, Tokyo」。その第三期デザイナーに選出されたファッションブランド「niuhans(ニュアンス)」の濱田大輔氏が、先日2週間のプログラムを終えて帰国した。2010年にブランドを立ち上げ、素材への強いこだわりやシンプルでクリーンなデザインを持ち味とするクリエーションで人気を獲得している濱田氏に、イタリアでの経験や、ブランド立ち上げの経緯、服づくりのこだわりなどについて聞いた。

 

niuhansデザイナー濱田氏

ファッショントレンドについての授業の様子

「マランゴーニ学院」のデザイナー留学プログラムで、2週間ほどミラノに行かれましたが、どのようなコースを専攻されましたか。

ファッションプロダクションコースを専攻しました。受講者の中には、ファッションを初めて学ぶような人も多かったので、授業は素材、生産、マーチャンダイジング、トレンドなどに関する基礎的な内容が中心でした。僕のクラスは約半数が経験者で、自分のブランドをカナダで運営している女性や、社員200名以上のアパレル企業の次期社長のメキシコ人男性など、さまざまな国籍や年齢、キャリアの人が集まっていました。東京にいる時にはあまり意識しなかったことですが、当然それぞれの国にファッションというものが根付いていて、世界という大きな視野で見ると、東京のファッションも各国で起こっていることのひとつにしか過ぎないということを実感しました。

 

実際に授業を受けて、日本のファッション教育との違いなどは感じましたか。

一般的に日本人は協調性を重視すると言われていますが、海外では授業においてもやはり自己主張が強く、みんな言いたいことをしっかり発言している印象でした。例えば、先生から課題が出された際に、それをそのまま受け入れるのではなく、納得いかない点があったらそれを先生にはっきり申し出るんです(笑)。また、先生の多くが長くファッション業界に身を置いてきた人なので、教科書に書かれているような内容をそのまま教えるのではなく、“See Now, Buy Now”といった今、まさに世界のファッションで起っていることをトピックに挙げるなど、2016年現在の最新の情報や各メゾン(ブランド)のビジネスの仕方、トレンドがつくられるまでの流れ、世界的に影響力を持つファッションジャーナリストについてなど、それぞれのキャリアの中で経験してきたことを、包み隠さず教えてくれます。

 

工場見学で訪れたプリントとジャカード織の工場

特に印象に残っている授業や課題などはありましたか。

授業の一環で工場見学に行きましたが、その規模の大きさに驚きました。そこは、プリントとジャカード織の工場でしたが、最新設備が完備されていて、働く環境も素晴らしく、まるで日本の自動車工場を見ているような最先端の雰囲気がありました。工場の歴史やアーカイブなども見せてもらいましたが、そうした古いものに対するリスペクトや職人としてのプライドが強く感じられ、イタリアではファッションが文化として根付いていると同時に、一大産業であることを実感しました。 2週間のプログラムの後半に、クラスメイトとペアになり、特定のブランドのアイテムや型数、素材、プライスなどを分析した上で、来シーズンのコレクションの提案を行うというプレゼンテーションがありましたが、お互いのパソコンの言語環境が違うので、パワーポイントの資料を作成することもままならず、色々と上手くいかないことが多かったのですが(笑)、それも良い経験になりました。

 

さまざまな国籍の人たちが集まる環境に身を置くことで学べることも多そうですね。

そうですね。今回の留学を通して、各国のファッションに対する考え方の違いを強く感じました。例えば、イタリアでは日焼けした肌を露出するようなスタイルが好まれますが、何がかっこ良いのか、セクシーなのかということは国によって違います。こういうことは現地に行ってみなければ分からない部分ですし、自分の中に一定の幅を持つということはとても大事だと思います。もちろん、その国のファッションの感覚が自分に合う合わないということはあるので、それぞれの趣向や方向性に応じて考えればいいことですが、さまざまな人たちが集まるミラノやパリ、ニューヨークなどファッションの主要都市に行くことで得られるものは多いのではないかと思います。

 

ミラノの中心地に位置するマランゴーニ学院。エントランス(左)と校内の様子

 

濱田さんは、今回のミラノの他にも、パリやロンドンで仕事をされた経験があるそうですね。

はい。父が建築関係の仕事をしていたこともあり、高校・大学と建築を学んでいましたが、建築の世界は建築法や構造計算などさまざまな制約があり、表現の自由度に制限があることが自分には物足りませんでした。そこで、もともと好きだったファッションの道に進もうと考え、大学を中退してファッションの専門学校に入り、その流れで21歳の時にパリに留学しました。卒業後も現地のインターン制度を利用して、KITSUNÉ(キツネ/現MAISON KITSUNÉ)で1年ほどアシスタントをしてからイギリスに渡り、ロンドンでもいくつかのブランドで経験を積みました。

 

niuhans 2016 A/W Collection

当時から自分のブランドを立ち上げたいという思いはあったのですか。

最初はあまり現実的に考えていませんでしたが、徐々に自分のブランドを始めることについて考えるようになり、アイデアノートなどは描き続けていました。自分でブランドをするなら日本で始めたかったので、帰国してから約1年半の準備期間を経て、2010年の秋にニュアンスをスタートしました。

 

ブランド起ち上げ時からヴィジョンやコンセプトは変わっていませんか。

当初から今と変わらず、トレンドに左右されないベーシックなデザインをベースに、しっかりとこだわりがあってクオリティも高い洋服をつくりたいという思いがありました。また、着ていて気持ちが良いもの、精神的に豊かになれるもの、愛着がわいてくるものにしたかったので、オーガニックコットンなど天然の素材や着心地にこだわっています。アイテムとしては、ありそうでなかったものをつくることを意識していて、例えば、色が綺麗なヘビーウェイトのTシャツや、ミセスの洋服などに多く見られる接結ダブルフェイスのコートなどをデザインしています。また、ホールガーメントなど比較的新しい技術を用いたニットに伝統的な草木染めを施すなど、新旧の技術を組み合わせて、これまでになかったものをつくるということにもトライしています。

 

niuhans 2016 A/W シーズンビジュアル

シーズンヴィジュアルにも毎回こだわっているようですね。

ベーシックな洋服だけではなかなか世界観は伝わりづらいので、シーズンヴィジュアルを通して、イメージを膨らませてもらえるように意識をしています。毎シーズン、自分が興味を持っているフォトグラファーのリストの中から、イメージに合う人に撮影を依頼し、OKが出たらサンプルの洋服を送り、プロのモデルやヘアメイク、スタイリストを入れないでほしいという希望だけを伝え、自由に撮影をしてもらっています。ふたを開けてみるまでわからないところがあるリスキーな方法ですが、フォトグラファーの感性を100%信頼し、今のところはこのやり方でうまくいっています。もともと、人種や性別、年齢、職業に左右されない洋服というものをコンセプトにしているので、こちらでブランドのイメージや着こなしを提案するのではなく、それぞれの人に洋服からイメージを広げてもらえればと考えています。シーズンヴィジュアルを撮影してくれたフォトグラファーのインタビューなどもバイリンガルでWebサイトで公開していて、そのクリエイターの作品紹介だけでなく、写真についてや私生活といったプライベートなことまでインタビューしています。

 

今後のブランドの展望についてもお聞かせ下さい。

現在は国内の卸がメインですが、この部分をしっかり広げていきたいと考えています。並行して海外の展示会にも出していて、ニューヨーク、ロンドン、バンクーバー、韓国、台湾など数店舗に置いてもらっていますが、今後も海外への発信は継続していくつもりです。ただ、ブランドの規模を大きくしたいという思いはまだあまりなく、自分の目が届く範囲の中で、こだわったものをしっかりつくっていければと考えています。また最近では、『ほぼ日手帳2017』やスロヴァキアのファクトリーブランド「NOVESTA」と共同企画していますが、こうした異業種とのプロジェクトにも積極的に取り組んでいきたいですね。

 

niuhansの『ほぼ日手帳2017』。カバーはジッパータイプで、インディゴブルーの生地は岡山県倉敷市児島の織物メーカーが開発したコットンウールデニム。春夏秋冬をイメージしたポストカード付き

Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto

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